【京都府高校入試 専門学科 最新入試分析】 2024年度 西京高校エンタープライジング科

2024年06月16日
中学生向け 受験対策/勉強法

国語

総論

例年の問題の傾向

西京高校エンタープライジング科の国語入試の問題構成は、評論と古文の二題です。

例年の問題の傾向としては主に二つで、表示形式と内容についてです。

一つ目の傾向は「評論文における型に囚われない課題文の表示形式」です。例年、課題文の形式は変わっており、定められた形式が無い事が傾向といっても良いでしょう。

二つ目は「感覚的に分かりやすい内容」です。評論・古文ともに課題文の内容を把握することは容易であり、評論においては分かりやすい文章構造と相まって、内容の概観を掴むことは大して難しくないのではないのでしょうか。

これら二つの傾向だけを聞くと、西京高校エンタープライジング科の国語は簡単に聞こえますが、決してそうではありません。

西京高校エンタープライジング科の国語入試の特徴として、「課題文の深い内容について問われる」があります。記述問題が評論文、古文の両方でも多く、課題文の内容を自分の言葉で説明できるほど深く理解していることが求められているのです。今年度でもその傾向は変わらず、課題文に対する深い理解が求められました。

 

大問別講評

大問1

アーティストが投げかける「問い」を楽しむ、という筆者特有のアートの楽しみ方について、筆者なりの解釈と、その例示を3人の人物を通して解説するというものでした。課題文の形式の型に囚われないと言っても、説明文の構造は論理的かつ王道的なものでした。また、課題文の内容をノートに整理する、といった問題も出題されました。

内容の理解は比較的容易ですが、それぞれの情報の関係性を文章構造に則り整理し理解できているか、が問われてました。

大問2

人の身を羨む蛙が、観音の力により、実際に人になった話。最終的には『蛙の願立て』の教訓を説明している説話でした。この課題文も大まかな流れは理解できますが、内容を自分の言葉で説明できる程理解していなければ、解答できない問題が多いです。

今年の一問

問題 大問一問七

傍線部5 「物を観るときの姿勢」とあるが、ある生徒は「小林秀雄」「セザンヌ」「東山魁夷」の三者について次のようにノートに整理した。これについて、後の設問に答えなさい。

 

人物

職業

物を観る時の姿勢

本文中の例

小林秀雄

文芸評論家

Bの目で見つめる

・凝視するように鑑賞する

・強い眼差しを何度も向ける

茶碗の鑑賞

セザンヌ

画家

・見たものをそのまま描かない

・自然の奥に潜む美しさを感じる

東山魁夷

画家

版画家

・真剣さ、厳しさがある

Yに到達するまで、じっと見つめ続ける

・最初からYが見えている

版画の色校正

 

解説

 この後、B,Y, 下線部について問う問題が続きます。それぞれの情報の関係性、分類が的確にできていることが前提に問題が問われていることから、「感覚的な理解」ではなく「構造的な理解」が重視されていることが分かります。

まとめ

 何度も述べているように、西京高校エンタープライジング科の問題では、内容を深く理解できているかが問われています。評論では、構造的に理解できるかも重視されており、そして古文では詳細な内容を自分で言葉を組み立てて説明できるか、が求められています。

 対策として、まずは「書く力を養うこと」「まとめる癖を付けること」が挙げられます。記述問題が多いということから、記述力は必須であり、また文章を構造的に把握する癖をつけておく必要があります。

 これらの具体的方法としては学校生活における「書く作業」「まとめる作業」を真剣に行うことでも十分可能でしょう。しかしより効果的な対策をしたい場合は、所有する国語参考書を「選択問題を記述で答えてみること」「課題文の内容を、毎回200字程度で要約すること」をオススメします。

 始めは簡単な問題でも良いです。自分の書いた言葉が、模範解答とどれだけずれているかを見ながら、自身の説明能力を養っていきましょう。また、その課題文の内容を毎回まとめることで、「まとめる力」を養うことができるでしょう。

 

英語

総論

近年、リーディング・スピーキング・ライティング・リスニングの4つの技能を中心とした実用的な英語の能力が求められている。西京高校エンタープライジング科の英語の試験は実用的な英語の力につながる素晴らしい問題が多い。たとえば、引用記事に関する二者の議論が題材になったり、意見英作文や表・グラフの読み取りといった問題が出題されたりする。また、全体に占めるリスニングの問題の割合が大きく、聞く力も求められている。さらに、近年話題となっているトピックを問題文に利用することも多く、世界の動きに対する敏感さも求められている。これらすべてを踏まえて、受検生には、文法書や教科書に書かれている、いわゆる知識を蓄えることだけでなく、直感的に英語を理解するという意味での「ネイティブさ」が求められる。

令和6年度入試の分析

 今年もリスニング試験、筆記試験の構成であった。リスニングは、A:文章の空欄を補充する問題、B:アナウンスに関する問題、C:会話に関する問題、D:会話に関する問題、の四題構成であり、以前と似たような出題であった。筆記試験に関して、一つ目の大問では、あるトピックについてのレクチャーや図、会話文から構成される文章であった。また、二つ目の大問では標準的な説明文が出題された。文章の形式や量は昨年度と変わらず、難問もなかったため、

大問別分析

リスニング

A】【難易度:標準】

長文が1度だけ放送され、記載されている本文中から抜けている2語の英語を補う問題。この問題の最大のポイントは、ひとつわからないものがあってもそれにとらわれず、次の空欄を確実に正解させることである。

 

B】【難易度:標準】

 学校の校外学習のアナウンが2度放送され、それについての選択式の設問に答える問題。1回目の会話を聞く前に、設問に目を通す時間を20秒間与えられた。設問の疑問詞にチェックを入れ、問われる部分を放送前に知っておくことが重要である。それから1回目の会話を聞き、分かるものだけ解答を確定させ、2回目の会話でわからなかった部分だけを聞いて確定させる、という流れになるだろう。

 

C】【難易度:やや難】

 2人の高校生の会話が1度だけ流れ、選択式の設問に答える大問だった。仕事というテーマであり、専門用語が多く出てきており、難易度が高いものとなっていた。この問題では、設問に目を通す時間が60秒与えられた。会話内の情報量がかなり豊富なため、この時間内に設問内容をすべて理解しておかないと、1度だけの放送で正解することは難しくなる。

 

D】【難易度:標準】

新しくペットを飼うことについての2人の会話が2度放送され、3つの設問に答える問題。この問題では、設問に目を通す時間が40秒与えられた。事前に問題や図を読んでおくことが重要になる。

 

筆記試験

大問1 【難易度:やや難】

 文章の内容は、和食についてであった。まず会話文によって話題が導入され、和食に関するレクチャーがあり、最後に再び会話文で締められている。また文章の最後に日本の輸出額のグラフが添えられている。

 大部分を占めるレクチャーは、5つのブロックで構成されており、「和食の概要」、「和食を広める活動」、「健康への効果」、「和食が広まる現状」である。和食は身近なものであるため、理解がたやすかったのではないだろうか。また最後の段落では、グラフとの関連も見られるため、本文と対応させながら読んでいくことが大切である。

 以下に各設問の内容を示す。

1 本文の内容に合致する選択肢を選ぶ問題

2 本文の内容に合致する選択肢を選ぶ問題

3 本文の内容に合致しない選択肢を選ぶ問題

4 適切な指示語の内容を指す選択肢を選ぶ問題

5 本文中の適切な位置に文を補充する問題

6 本文中の空欄に当てはまる単語を答える問題

7 表に入る適切な選択肢を選ぶ問題 

8 本文中の空欄に当てはまる単語を考えて答える問題

9 本文の内容に合致する選択肢を選ぶ問題

10 文中の空欄に当てはまるように指定された語数で答える問題(意見英作文)

 昨年に比べて、本文の内容と合致する選択肢を選ぶ問題が増えた。このような形式の問題は、本文の該当箇所にいち早く戻れるかがカギとなってくる。そのためには、本文を一読する際に簡単なメモを残しておくことが大切である。

 

大問2【難易度:標準】

 今年度の問題では、リーダーシップに関する英文が出題された。動詞を活用させて空欄を埋める問題、文中の語句に合う図を選ぶ問題、抜け落ちた1文を適当な箇所に挿入させる問題など、比較的得点しやすい問題が多かった印象である。このあたりで確実に点をとることが非常に重要になる。また、70字以上90字以内の日本語で3つの指定語句を使った記述説明を求める問題が出題された。この記述問題で得点をとることができたかが非常に重要だと考えられる。

以下に各設問の内容を示す

問1 本文中の空欄に適切な形で動詞を活用させる問題

問2 本文中の適切な位置に文を補充する問題

問3 本文中の空欄に適切な文を補充する問題

問4 本文中の語句を表している図を選ぶ問題

問5 本文中の空欄に当てはまる単語を答える問題

問6 適切な内容を指定された語数で答える問題(日本語記述)

問7 語句を意味の通るように並べ替える問題

問8 本文の内容に合致する選択肢を選ぶ問題

分野別分析・対策

 リスニングに関しては、ある程度聞き取りの能力があるならば、解き方のテクニックを学ぶだけで得点源とすることができると考えられる。しかし多くの受験生はその対策法を知らず、苦手意識を持っているのではないだろうか。特に難易度が上がるのは、英文が1度しか放送されない問題だ。多くの受験生が苦戦するであろう1度しか音声が流れない問題を正解できるかどうかは、聞く前にいかに設問を把握できるかにかかっていると言っても過言ではない。【C】では,放送前に60秒,放送後に30秒の時間が設けられていることからも、問われる内容を整理してから聞くことの大切さがわかる。例として放送前の時間に問われる質問の疑問詞を確認する、選択肢の主語動詞を確認するなどさまざまな方法がある。

 次に筆記試験についてであるが、記述問題は、要約箇所がまとまっており比較的に解きやすかったのではないだろうか。記述問題は原則、傍線部の前後2~3文(少なくとも同じ段落)に該当箇所が存在している。そして、こちらを文章全体の要旨に合うようにまとめる。難しかった問題としては並べ替え問題であろう。動詞(候補)3つもあり、惑わされた受検生も多いのではないだろうか。詳しくは、後述の至極の一題を参照してほしい。

また、意見英作文についても同様に、筆記試験は戦略を立てておくことにより短時間で効率よく得点できる。こちらについても、リングアカデミーの主要講座で取り扱う予定である。

 

今年度至極の一題

2 問7 (  )内の語を文の流れに合うように、最も適切な順に並び変えなさい。

 They ( to / methods / the / how to / use / have / understand) depending on the people they meet at work, and they are responsible for the communication system in their group.

  ※depending on:に応じて, be responsible for:に責任がある

 語句の並べ替えで重要なのは「品詞で分類する」「かたまりを作る」である。まず動詞の数に着目すると、「use」「have」「understand」と3つである。原則1文には動詞は1つであるため、接続詞やto不定詞などが隠れていないか注意する必要がある。今回は「how to do」と「have to」である。すると「have to understand」「the methods」「how to use」といったかたまりが出来てくる。

 以上より、「They have to understand how to use the methods」という答えとなる。文法的に考えることはとても大事だが、しっかりと文意が通っているか確認することも怠らないようにしよう。

 

数学

概要

試験時間60分、大問数6、小問数20であり、例年通りの問題量であった。来年度以降も大きな変化はないと考えられる。昨年度に引き続き珍しい設定の問題は少なく、西京らしい「オーソドックスだが難しい問題」が並んだ。西京を目指す受験生であれば、いずれの大問も一度は問題集等で似たような問題を見たことがあったであろう。したがって、一度学習したことをきちんと自分の知識として蓄えられているかが高得点のカギだと言える。出題分野についても関数、図形、確率、整数、動点、統計と過去の試験で頻出だった分野から出題されている。過去問から傾向をつかみ、集中的な対策を取ることが有効である。

 

大問別講評

大問1 小問集合

昨年度と同じ小問6個の構成であった。誰も解けないような難しい問題はなかったが、逆に見た瞬間に解けるような易しい問題も少なかった。数学が苦手な受験生は(2)(5)(6)を確実に得点し、それ以外で解けそうな2問を頑張って解きたい。このようにして解くべき問題を見極め、15分程度で5問得点できるとよいだろう。(1)は難解に見えるが、前後2つの項の共通項で括り出すと簡単に計算できる。3乗以上が登場した計算問題は、何かしらの計算の工夫を挟むことで簡単に計算できることが多い。(2)は最も容易な問題だった。求める式を因数分解すれば、代入する式がそのまま見えてくる。(3)はそこそこ難しかっただろう。正六角形は対角線を3本引けば、正三角形が6個出てくることを知っていれば、本問でも中心から補助線がひけるのではないだろうか。そうすれば、正三角形の一辺の長さを考えるところから解答につながるはずである。(4)はいかにも西京らしい問題。正四面体とその内接球、外接球は他の学校に比べて西京では圧倒的に好まれるテーマなので、西京を受験するなら必ず押さえておきたい。(5)の確率、(6)の統計は比較的易しかった。どちらも西京でよく出る分野であり、かつ典型的な問題なので必ず得点したい。

大問2 関数

座標平面上の図形に関する出題。このテーマは西京高校エンタープライジング科やその他専門学科だけでなく、全国の高校入試全体で頻出である。本問はその中でも垂線(直線と垂直に交わる直線)と回転図形を扱っている。これらは学校では十分に学習しないため、塾や受験用の問題集を用いた専門的な対策が必要である。また、回転図形は西京高校エンタープライジング科入試において2018年までは非常によく出題されていたが、それ以降は出題がなく久しぶりの出題であった。傾向に合わせた重点的な対策は重要だが、過去5年で出題がないからといって、対策0の分野を作るのは危ういと言える。小問別にみると、(1)は非常に易しいため、必ず得点したい。(2)は「垂直に交わる2直線の傾きの積は-1になる」という知識が必要であった。学校で学習する範囲に加えて、こうした入試では頻出の知識をつけていくことも重要である。(3)はx軸にもy軸にも平行でない直線を軸として回転図形を考える問題。(2)の答えや三平方の定理を活用して必要な長さを求めよう。複雑に見えるが難解な発想は必要ないので、回答時間を捻出し解ききりたい。

大問3 確率

さいころの出目によって図形上の点の進み方が変わる確率の問題。さいころを2個振る問題は他の専門学科入試でも頻出であるが、本問のようにさいころ2個に加えてさらにコインを振ったり、さいころをもう1個振ったりする問題は珍しい。さいころ2個のときよりも数え上げが大変になるが、やるべきことはそれほど変わらないので丹念に数え上げよう。本問のポイントはさいころの実際の出目は6通りだが、進み方は3通りだということである。これら3通りをどう組み合わせれば条件を満たすかをまず考えて、次にさいころの出目を考えて確率に落とし込もう。(2)では数え漏れに気を付けたい。対角線上への移動が厄介なので、これが絡む移動に特にきをつけよう。

大問4 動点

平面図形の上を2点が動く問題。設定はありきたりだが、(1)の問いがやや珍しいだろう。しかし、解き方は動点のセオリーに則ったシンプルなものである。ACとPQが平行であるとき、AB:BC=PB:BQが成り立つことに着目しよう。経過時間を文字でおき、点P、Qそれぞれの移動距離をその文字で表した後、PBとBQの長さを求めればよい。さらに一般化するなら、「求めたいものを文字でおき、方程式を立てて答えを求める。」という方程式の基本を押さえよう。(2)は動点でよくある問いである。面積を求める図形がある時刻を堺に変化していくので、それらの形ごとに場合分けをして、方程式を立てよう。大抵の場合答えは複数あるので、きちんと全部解答できているかに注意を払いたい。

大問5 立体図形

立体図形の切断の問題。この大問も立方体を切断するという設定はよくあるものである。しかし、(2)以降の複数の平面で切断する問題は難しく感じる受験生が多かったのではないだろうか。頭の中だけでイメージして答えを出すのは難しいので、空間図形上に自分で情報を書き加えて考えよう。(2)のポイントは対称性である。平面ADHEと平面BCGFの真ん中の平面を対称面として、左右で全く同じ形になることに注目しよう。そして、ACFとBDEによるそれぞれの切断で切り取られる部分が一部被っているが、この体積をしっかり捉えて、体積の計算に反映させることが重要である。その体積の計算の際にも、対称面で二つに分けると考えやすい。(3)(4)は空間図形が苦手な受験生は捨て問にしてもよいかもしれない。(4)は(2)と手順は同じだが、3つの切断面を考える必要があり、解答に時間がかかるだろう。

大問6 約束記号

西京の約束記号の中では比較的設定が易しい問題である。他3校の専門学科入試と比較しても例年かなり複雑な設定で出題されることが多いが、本問は約束記号の中ではかなり易しい設定と言える。その分、各小問が若干複雑に設定されているので、ルールの把握を早めに済ませて各問に集中したい。(1)は3の倍数の判定法を知っているかが解答の分かれ目であった。すなわち、各位の和が3の倍数ならその数は3の倍数であることを応用して、各位の和が3n+2となればよい。(2)(3)は約束記号が何を意味しているかを言葉で把握し、それを四則演算の式で表現するとよい。例えば(2)であれば、xを6で割った式が1、かつxを8で割った式が1となるxを求めればよい。そこから、片方の条件を満たす数を順番に並べてもう一方の条件を満たす数を見つけてもよいし、等式を作って解いてもよい。このように、約束記号の問題では一見複雑そうに見える式を咀嚼し、簡単な言葉で表現することが重要である。これを意識して過去問を解き、解答の手順に慣れていこう。

対策

西京高校エンタープライジング科を含めた京都の専門学科数学において合格ラインを越えるためには2つの力が必要である。

1つ目は入試頻出のパターンをきちんと覚えて、適切な場面で使う力である。これは今年の入試では特に必要であった。数学的思考の基本は自分の持っている基礎知識を組み合わせることにより難しい問題を解決することである。毎回0から解答をくみ上げることではないことに注意しよう。

2つ目は自分で色々と試行錯誤をして解答にたどり着く力である。今まで見たことがないタイプの問題で、お決まりの解法はなく、有効そうな解き方をいくつか試した後、最適なものを選んで解答に至るという流れを想定して作られた問題が出題される。1回の失敗でめげずに何度かトライする執念が大切である。

特に、今年度の入試では1つ目の要素が強かった。学校ではあまり深く習わないが入試ではよく出る知識を用いればすぐに解ける問題が多く、そういった知識をしっかり学習し、覚えていたかどうかが合否の分かれ目になった可能性がある。数学は思考力が大事だと多くの受験生が思っているが、実はそれ以上に基本事項を覚える力、覚えた知識を組み合わせる力が重要である。暗記を蔑ろにせず、受験勉強に取り組んでもらいたい。

 

理科

総論

西京高校エンタープライジング科の理科は小問数が47問とやはり圧倒的に多い(他の高校だと大抵20問程度)。大問数は3つだが、それぞれさらに細かいパートに分かれているので、大問数はあまり意味をなした数字というわけではない。これだけ問題が沢山あるので当然文章量も多いが、1つ1つの文章が短いので、分かる問題からテキパキと解いていくことが重要である。記述問題が少ないものの、選択問題であっても条件が複雑で解答に悩むものが多く存在するので、自分なりに時間配分のペースを決めて解き進める練習が必須である。

大問別講評

大問1

(A)

関連のない小問集合が2問。光と仕事率からの出題で、どちらも平易な内容である。素早くこの2問を正答し良いスタートを切りたい。

(B)

2014に理科入試が導入されて以来、西京高校の入試で浮力の問題が出題されなかったことは一度もない。さらにほとんどの問題でアルキメデスの原理(教科書発展内容)を利用している。問題文中にも説明はあるのだが、西京受験生であれば説明なしにアルキメデスの原理を使えるようにしておきたい。(2)は文字式で解答するタイプの抽象度が高い問題で、これが解ける受験生は多くないと考えられる。嵯峨野高校など、他の専門学科入試でもこのような解答形式の問題が出題されているので、練習を積んでおきたい。

(C)

電磁誘導からの出題で、対話文を読み解く必要がある。対話形式の文章は不必要な記載も多く含まれるので、強弱をつけて読む感覚を身につけておいてほしい。これは他の科目にも通ずる重要な力である。(3)(4)がやや難しく、電磁誘導がコイル内の磁界の変化による現象だということをしっかりと理解している必要がある。

(D)

電流と回路がテーマの問題。昨年度も同じ箇所で電流と回路の問題が出題されている。問題に載っている図は若干見づらいため、自分で書き換えて計算を行うのが良いだろう。計算が面倒で時間がかかるのは間違いないが、落ち着いて取り組めば全問正解は可能である。

大問2

(A)

化学分野からの出題。長々と前文が書いてあるものの教科書の知識が入っていれば全く読む必要はなく、小問を読むだけで全ての問題に解答できる。小問から目を通す癖をつけておきたい。(3)はある程度あたりをつけて解かないと計算に時間を取られてしまうので注意。(6)は原子の質量比を問う問題で、専門学科では頻出のテーマである。苦手な人が多い内容だが、情報をしっかりと整理できれば計算はさほど煩雑でないので、攻略したいところである。

(B)

種々の化学変化をテーマにした大問で、計算問題ラッシュが苦しい。ただしその計算問題の中でも(3)は平易かつ、計算問題以外は基礎知識の理解を問う問題なので、これらで着実に得点を積み重ねたい。そのためにも教科書内容の徹底理解は必須である。

大問3

(A)

湿度をテーマにした地学分野からの出題。全体的に難易度は低めなので、全問正解を目指したいところ。余談だが「ろてん」を答えさせる問題は嵯峨野高校でも同じ年に出題されている。

(B)

火山岩をテーマにしたパート。専門学科入試では物理・化学範囲に偏った出題がなされることが多いのは事実だが、決して生物・地学分野の暗記事項をおろそかにしてはいけない。難易度は易しいので、こちらも全問正解を目指したい。

(C)

植物の分類と蒸散をテーマにした大問。(1)(3)はそれぞれ裸子植物・合弁花類に該当する植物種を全て答えるという形式であり、教科書内容の知識問題ではあるものの難易度が高い。同年の嵯峨野高校でも同じような問題が出題されているので、やはり教科書内の知識の徹底理解は必須である。他方(2)(4)は平易な知識問題なので確実に得点したい。(5)(6)についても実験が典型的なものなので、落ち着いて取り掛かれば正答できるはずだ。

まとめ

西京高校エンタープライジング科の理科は50分という時間に対して、小問が47個なのは、量として圧倒的に多い。文章量も多いので過去問演習のときに集中力が切れてしまうことも考えられるが、1問1分ペースで解いていく感覚を自分でモノにしてから受験に臨んでほしい。ストップウォッチを使い、各パートごとにどれだけ時間がかかったかを記録しておくのも手だろう。また大問別講評に記した通り、ところどころ厄介な問題があるものの、ペース的に無理なく解き切れるような難易度設定がなされているので、素早く丁寧に解くのが合格の鍵である。

社会

例年の傾向

特徴① 分野融合型の問題が多い

西京高校エンタープライジング科の社会は地理・歴史・公民のすべての知識を使って解く問題が多く出題されます。特に大問1はその傾向が強く,各分野の知識を結びつけて問題に取り組む必要があります。

特徴② 図表に関する問題が多い

西京高校エンタープライジング科の社会では,図表に関する問題が多く出題されます。教科書や資料集に載っている図表が多いので,図表や地図も見慣れておく必要があります。

特徴③ 記述問題が必ず出題される

西京高校エンタープライジング科の社会では,80字程度の記述問題が毎年2題出題されます。教科書に書かれた内容が問われることはまず無く,与えられた資料を元に考えた内容を答える問題であることが多いです。

2024年度入試分析

※難易度の説明

A:合格点を取るためには正解しなければならない問題

B:合格点を取るためには半分以上は正解しなければならない問題

C:解けなくても合否に影響しない(=解けなくても十分合格できる)問題

大問1

問題番号

分野

概要

難易度

問1

公民

貨幣の信用に関する問題

A

問2

公民

自由権に関する問題

A

問3

公民

デフレスパイラルの仕組みに関する問題

B

問4

地理

世界の国々における人口ピラミッドに関する問題

B

問5

公民

国際連合に関する問題

A

問6

公民

人権の発展に関係する史料に関する問題

A

問7

公民

社会保障制度に関する問題

A

問8

公民

四大公害訴訟に関する問題

B

問9

地理

地方別の発電所の種類と数に関する問題

A

問10

地理

世界の環境問題に関する問題

A

問11

地理

エネルギー供給における原子力発電の割合の推移を説明する問題

B

問11は記述問題,それ以外は選択問題でした。

公民分野からは経済や国際社会に関する問題が多く出題されました。

大問2

問題番号

分野

概要

難易度

問1

歴史

弥生時代の史料に関する問題

A

問2

歴史

飛鳥時代,室町時代の出来事に関する問題

A

問3

歴史

絹の歴史に関する問題

A

問4

歴史

肖像画をもとに織田信長に関して考察を行う問題

B

問5

地理

民族衣装をもとに都市の雨温図を選ぶ問題

B

問6

歴史

中世の武士に関する問題

A

問7

歴史

16世紀の世界の出来事に関する問題

A

問8

歴史

江戸時代と現代のリサイクルに関する問題

A

問9

歴史

明治時代の史料の読み取り問題

A

問10

地理

古地図の読み取り問題

B

問11

地理

衣類の輸出量に関する問題

B

問12

歴史

資料をもとにインド独立運動の展開について考察する問題

B

問12は記述問題,それ以外は選択問題でした。

教科書に載っている知識を正確に把握していれば,難なく解ける問題がほとんどでした。

対策と勉強法

対策① 教科書の内容を確実に覚える

西京高校エンタープライジング科の社会の問題は,教科書に書かれている内容からしか出題されません。つまり,教科書の内容を確実に覚えることで,合格点を取ることができます。

教科書の内容を確実なものにするためには,定期テストに向けて普段からしっかり勉強することが必要です。中学3年生になったら中2までの内容の復習を行いつつ,歴史・公民分野の先取りを行うことが重要です。

中学3年間の内容が1冊にまとまっている問題集を進めながら,教科書範囲の内容を確実な物にしましょう。

対策② 普段から資料集・地図帳を見る

西京高校エンタープライジング科の社会の問題は,図表に関する問題が多く出題されます。西京高校エンタープライジング科の社会の問題では資料集に載っているような図表や写真が多く出題されるため,図表を知っていることで得点を上げることができます。

図表に慣れておくためにも,普段の学習から図表を見る習慣をつけ,写真や統計,史料などの内容を把握しておくようにしましょう。

対策③ 過去問を解く

西京高校エンタープライジング科の社会の問題は過去問の傾向に沿って出題されます。入試当日に全く同じ問題が出題されることはほとんどないですが,出題傾向に慣れておくことで問題に対する対応力を高めることができます。

西京高校エンタープライジング科の社会の傾向をつかむためにも,過去問3年分は解いておきましょう。その際,正解した問題も間違えた問題も,どのように答えが導かれるか説明できるようになるまで復習をしておきましょう。