【京都府高校入試 専門学科 最新入試分析】 2024年度 嵯峨野高校京都こすもす科

2024年06月16日
中学生向け 受験対策/勉強法

国語

総論

例年の問題の傾向

 嵯峨野高校京都こすもす科の国語試験の特徴的な点は以下の2つです。1つ目は、「評論」「物語」「古文」という3段構えであることです。堀川高校、西京高校、桃山高校の専門学科と異なり、嵯峨野高校京都こすもす科入試では「物語」が出題されます。これにより、他の高校と比べて読まなければいけない文章量が遥かに多くなっています

 2つ目の特徴としては、「課題文に対する共感のしづらさ」があります。評論文・物語ともに、中学生である受験生が共感しづらい文章が多いです。その理由として、テーマの難解さや筆者の考え方の独自性、中学生では理解が難しい立場からの視点(親など)から語られる心情などが挙げられますが、これらの目的としては「共感ではなく、構造的に文章を捉えているかどうか」を調査するためだと思われます。

今年の問題の特徴

 評論・古典の設問数、必要文字数は、例年と大きく変わりませんでした。しかし、例年と異なり、物語の記述問題が一問減り、古文範囲で頻出であった「会話文」問題が物語分野においても出題されました。これにより、物語・古文の両方で「会話文」問題が出題され、例年以上に時間がシビアであったことでしょう。

 一方で、会話文は誘導的な要素も兼ね備えており、読み進めることで、課題文・設問をより簡単に解けるようになったと思われます。このような問題構成から、記述力よりも、情報処理速度の評価における比重が大きくなったことが分かります。

大問別講評

大問1

 課題文では、世界史叙述を「海域世界」という観点から捉えることをテーマに、筆者独自の解釈について紹介しています。難易度自体は昨年と変わらず難解であり、受験生はまず「海域世界」という耳慣れない言葉に対する解釈から始めなければなりません。論の展開構成としては分かりやすく、既存の捉え方の欠点を挙げ、筆者独自の解釈を提言する形です。このような文章においては、「筆者の提言」=「適切な考え」という結論に持っていきたい事が決まっているので、この観点から筆者独自の解釈とそれ以外で情報を整理すると、その情報の立ち位置が分かります。

大問2

 主人公の心情の変化を描いていますが、中学生である受験生からすれば共感できるか難しいでしょう。問題傾向でも述べたように、「共感的に物語を読む」のではなく「構造的に物語を捉える」必要があります。

 今回の物語では、小学生の同窓会に参加した社会人が、気にかかる出来事について心情の変化を捉えた話でした。主人公が同級生からの発言を経て、物語前後で心情が変化する、というオーソドックスな形が変わらない問題であり、内容自体もやや易化したと言えます。

 一方で会話文問題が挿入され、解く時間がシビアになっています。会話文問題自体は導入も兼ねており、むしろ課題文を理解するヒントとして役立ちますので、会話文にしっかり取り組める余裕を持てたかどうかが、大問2の鍵となっているでしょう。

大問3

 古文の課題文は、内容自体は簡単ですが、評論、物語、古文という3段構えに加えて、文章量・記述量が多く、時間不足に陥る可能性が高いです。難易度は変わらず、会話文から必要な情報を抽出する力が求められます。

今年の一問

大問ニ問七

(7)本文中に「奥山君の冷たい背中に、決して交わらない瞳に」とあるが。次の【会話文】は常盤さんと太秦さんがその表現について話し合ったものの一部である。これを読み、【会話文】の中の空欄に入る表現を25字以内で書け。

 

【会話文】

常盤さん:『奥山君の冷たい背中に、決して交わらない瞳に』とあるけれど、これはどういうことなんだろう。

太秦さん:これは大会が終わって中学校に入学するまでの間の奥山くんの「私」への態度を、「私」の視点から表現したものだよね。

常盤さん:そうか。『新しい学校。新しいクラスメイト。』とあるよね。これは、小学校を卒業して、中学校に入学して新たな環境に身を置いたということなんだね。奥山くんって、どういう人なんだろう。

太秦さん:本文より前の箇所に、奥山くんは、面倒見が良く優しい性格で、クラスで一番足が速かったから、足の遅い「私」を助けるために、三十人中三十一脚の配置で「私」の横になった、と書いてあるんdなよ。

常盤さん:その奥山くんが、どうして、大会の後に『奥山君の冷たい背中に、決して交わらない瞳に』と書いてあるような態度を「私」に取ったのかな。

太秦さん:その奥山くんが、この同窓会で「私」に再会して、当時のことを話た面が本文の後に出てくるのを見つけたよ

~~~~~引用文~~~

「すごい汗だったんだ、緊張して、あのムードにやられちゃって。紐を結ぶときも、腕をくむときも、どんどん汗が出てくるから凄く焦って。飯田さんが転んだ時、あれが絶頂だった。ぼくのせいだ、ぼくが汗ばっか気にしてたからだってパニクって、ますます手がびしょびしょになって....」

 ごめん、と奥山くんが悲痛な声とともに低頭する。

「その濡れた手を、どうしても、飯田さんに、さしだせなかった」

「‥‥」

 時間が止まった。時がもどった。十五年前のあの日、地べたに転がる私を無表情に見下ろしていた奥山くん。どうして気づいただろう。そのこぶしが大量の汗を抱いてたなんで。いつも冷静で、おだやかで、大人びていたあの男の子が、それほどの重圧に震えていたなんて。

~~~~~~~~~~~~~

常盤さん:奥山くんは、「私」が転倒した時、【空欄】ということが書かれているね。そのことを奥山くんは申し訳なく思っていたことが読み取れるね。

太秦さん:だから、「私」を避けるようになったんじゃないかな。そのときの奥山くんの様子が、「私」には『冷たい背中』『決して交わらない瞳』に見えたんだね。大人になった今、二人が話すことができて良かったね。

解説

空欄を埋めよ、という要求に対して、課題文を解釈するに役立つ情報を多分に与えてくれた問題でした。この文章を読むことで、「私」の「奥山くんに責められているのではないか、失望、怒りの感情を抱かれているのではないか」という考えが間違いであることが分かります。本文の内容を踏まえると、主人公を縛り続けていた呵責の念は、周囲の実際の心情とは異なる、という文章全体の流れを推測できます。

まとめ

 2024年の問題は、量という観点から捉えると、例年と比べて、難化したと言えます。質は変わらず、むしろ物語は易化傾向にありますが、処理しなければならない文字量は年々増えてきています。このような傾向にある嵯峨野高校京都こすもす科を志望する受験生は、とにかく読む速度を早くする必要があるでしょう。課題文・問題文全体を把握する時間が確保できると、会話文が逆に課題文の理解を手助けしてくれるので、一気に得点しやすくなります。

 このような理由から、嵯峨野高校京都こすもす科国語入試では「読む速度」が特に求められており、現時点でできる国語の対策としては、とにかく文章を読むことでしょう。新聞でも何でも、ジャンルに偏りなく、文章を読みましょう。時間がない受験生は、教科書の文章でも良いです。とにかく「文章に触れ続ける」ということを意識し取り組む必要があります。

 

英語

総論

嵯峨野高校の英語は大問1がリスニング、大問2が物語文の読解、大問3が説明文の読解、大問4が単語類推問題、大問5が整序語順問題、大問6に和文英訳、大問7に自由英作文の構成となっている。総合的な英語力が問われる問題構成で、長文2つに加え、英作文もあることから、非常に時間制約が厳しいことが特徴である。

近年では上のような大問構成がオーソドックスな形として定まりつつある。 また、嵯峨野の英語を一言で表現するなら、「バランスが良い」と言える 。

 リスニング、小説の読解、論理的文章の読解、適語補充、並び替え英作、和文英訳、自由英作といったように、問題形式は様々である。細かな問題形式の変化はあるが、【聞く力】・【読む力】・【書く力】をバランスよく試している点で、嵯峨野の英語は毎年一貫している。

 当日の戦略としては、「時間のかからないものから順に解く」ことが非常に重要である。具体的には、大問4、大問5、大問6、大問7の適語補充、並び替え英作、和文英訳、自由英作文などの長文問題以外の問題を素早く確実に解き、その後、長文問題で解けるものから確実に解くことが重要となってくる。

当日までの勉強法としては、「基礎問題を確実に解けるようにする」ことに取り組んでほしい。合格に最低限必要なのは60点。だから、どの大問で何点取るかを過去問演習のときにイメージしておこう。

令和6年度入試の分析

昨年とほとんど同様であったが、大問3の説明文において、昨年のように説明文中にイラストや図が挿入された形式は出題されなかった。また長文の分量が去年よりも増えたため、より速読や情報の取捨選択が重要となった。近年出題されるようになった50語以上の自由英作文は対策によって時間を大幅に削減できるので、英作文に使いやすい例文や表現を即座に書けるように練習をしておこう。

大問別分析

大問1 リスニング【難易度:標準】

昨年と全く同じ形式、同じ問題数であった。このことからも、しっかりと対策をすることを学校側も求めていることが明白なのでしっかり対策して点を稼げるようにしよう。

 

大問2 長文 随筆文【難易度:やや易】

 例年は物語文が出題されていたが、今年は主人公の高校生が自らの体験を語る随筆文の形で出題された。ウミガメに興味を持った主人公がオーストラリアの学校に10週間の勉強プログラムに行くストーリー。随筆文であるものの例年と形式や解き方は特に変わらない。大問2の問題7問はいつもストーリーの順序と同じ順に配置されているため、文章を読みながら問題を逐一解くことで大幅に時間を削減できる。また、問題で問われている箇所以外の内容は詳しく把握する必要がないため、情報の取捨選択をしながら速読していくことが重要となる。

 

大問3 長文 説明文【難易度:標準】

 地球における大量絶滅をテーマとした説明文が出題された。昨年より分量は伸びたが比較的わかりやすいテーマであり、予備知識がある人はスムーズに読むことができたと思われる。嵯峨野の説明文では科学的なテーマの長文が出題される傾向があるため、日頃からそのようなことに関心を持ち、知識を持っておくことが良い、

 

大問4 単語類推【難易度:標準】

 短文内の単語類推問題が出題された。この問題では前後の文脈把握と単語力が問われる。単語力は一朝一夕で身につくものではないので、早い段階から単語を覚える習慣を身につけておこう。嵯峨野英語では時間の制約が厳しいのでこの大問で時間を浪費しないようにしたい。できれば3分以内で終わらせよう。

 

大問5 並び替え【難易度:やや難】

1語不要の整序語順問題が出題された。スムーズに解くためには、使わない1語の候補を絞ることが重要になる。関係代名詞、関係副詞や過去分詞、進行形、前置詞などは使わない1語として入れられる可能性が非常に高い。また、動詞などをそれだけでなく共に使われる前置詞なども一緒に覚えておくと非常にこれらの問題が解きやすくなるだろう。似た形式の問題をたくさん解いてパターンを把握できるようにしよう。また2021年からの新課程で中学範囲に追加された仮定法が出題された。今後も新課程で追加された範囲が出題されていくことが予想されるので、問題集などを使用する場合は新課程に対応した最新のものを使うようにしよう。

 

大問6 和文英訳【難易度:標準】

 英語にしづらいような日本語の和文英訳問題が出題された。英訳や英作文問題でもっとも重要なことは、自分の知っている使い慣れた表現だけで書くということである。どれだけ難しく、かつ問題の日本語に合っていそうな英文を書いたとしても、文法の使い方などが間違っていたら大幅に減点される。採点者としても意味のわからない英文を読むのは非常に労力がいるので印象も非常に悪くなってしまう。よく使われる定型表現などが使われているとスムーズに採点できて、採点者の印象も非常に良くなり、高得点をもらいやすくなるだろう。常日頃から、使い勝手のいい表現や例文をしっかりと暗記して、自らの英文に組み込めるようにしよう。またこの大問でも今年は仮定法を使う問題が出題された。

 

大問7 自由英作文【難易度:標準】

 50語以上の自由英作文が出題された。大問7に関しても大問6と同様に使い慣れた定型表現を増やすことが重要になる。限られた試験時間の中で50語の英作文をその場で考えることは非常に難しい。そのため、どんな英作文を書く際にも使える英語表現が多くあるので、それを積極的に使う練習をしておこう。よくある失敗例だが、この大問で10分以上の時間を使ってしまうと全ての問題を解ききるのは厳しくなってしまう。そのため5分で50語の英作文を書けるように日頃から心がけよう。

今年度至極の一題

大問6(1)

下線部の日本語の意味を表す英語を書け。

彼女に電話して、この新しいコンピュータの使い方を教えてよ、とお願いするよ。

 

解答例

I will call her and ask her to teach me how to use this new computer.

解説

人にdoするように頼む= ask 人 to do

人にもの・ことを教える= teach 人 もの・こと

Aの使い方=how to use A

これらの非常に重要かつ頻出な文法事項を組み合わせて文章を作る必要があり、非常に基礎力が試された。また、これらの文法は英作文でも使えるので必ず覚えておこう。

 

数学

概要

試験時間50分、大問数5、小問数17であり、例年通りの問題量であった。嵯峨野高校京都こすもす科の数学の大問25は毎年小問3つで構成されているが、今年度の大問4は小問2つであったので多少の変化が見られる。全体の難易度20212022と比べると、やや易化している印象。問題一つずつを見ても、いわゆる捨て問のような難しすぎる問題はなく、やや簡単な問題からやや難しい問題で構成されていた。難しい問題も、方針は立つがやや計算が大変であるものが多いので、日頃からさぼらずしっかり努力をしてきた受験生が報われる試験だったと思われる。全ての問題をミスなく時間内に解くのは容易ではないため、時間配分を考える上で対策は必須である。

大問別講評

大問1 小問集合

6問の構成であった。全て標準的な難易度であり、解くのが困難な問題はなかった。出題分野も文字式の計算、根号を含む計算、連立方程式、確率の基礎的な計算、統計の基礎的な計算、相似な図形と出題頻度の高い分野からの出題であった。基礎的な問題であるからこそ間違えてしまうと他の受験生と差が付いてしまうだろう。普段からこのような計算問題をミスなく処理できるように訓練を積んでおくのが大切である。

大問2 整数

与えられた関数に対して各小問に答えていく問題。普通の参考書ではあまり見ない形の関数が与えられて大問2から困惑したかもしれないが、実は見かけ倒しである。(1)はただ代入して計算。(2)は正の整数についての二次方程式を解くだけなので確実に得点したい。が正である事には注意しよう。(3)はと因数分解出来ることに気がつければ、簡単な計算で解ける。この因数分解は中学では高度ではあるかもしれない。この手の問題は、整数であることから文字式を積の形、つまり因数分解すると可能性を絞れることがよくあるので覚えておこう。

大問3 二次方程式

2つの点が動き、そのときの経った時間と三角形の面積の関係を考える問題。設定自体はありふれているが点が2つ動くのと、秒後の面積を考える際、について場合分けが発生するので若干計算が煩雑になりがちであるのでおちついて処理したい。(1)は具体的にが与えられているので計算するだけ(2)は趣旨としては(3)のために場合分けを行い、との関係を考えなさいという問題。場合分けでは図形の形や点の動きがいつ変わるかに着目するのが良い。 難易度は高い。(3)は(2)が出来ればボース問題で、二次方程式について解くだけである。計算が若干面倒だがミスなく処理したい。出てきた解がの変域から外れていないかには注意が必要であるが、今回は(たまたま)それを考えなくても大丈夫である。しかし普段から解と変域には意識して問題を解くことを心がけよう

大問4 平面図形

相似の絡んだ平面図形の標準的な問題。(1)は相似な図形の面積比は相似比の2乗であることを知っていれば解ける簡単な問題。(2)は三角形の高さをどう出すかが鍵になる。三角形の高さはわかるのでそこから相似な三角形を見つけてあげれば良い。問題文にもあるように、(2)は考え方がわかるように答えを求める過程も答案用紙に書かなければならず、ヒントが少なく自分で試行錯誤しなければならないので若干難易度は上がる。普段問題を解くとき、考え方を自分で説明できるようにしておくことが大切である

大問5 二次関数

二次関数と平行四辺形が絡んだ問題。(1)はの座標がわかっているのでそこから直線の方程式を出し、切片、つまりの座標がわかりそこからの座標がわかる。(2)はが平行四辺形であることに着目して、の中点との中点が一致することからの座標がわかりがわかる。ここまでは問題集にも載っているような問題設定だが答えにたどり着くまでの道のりが長いので意外と難易度は高いのかもしれない。(2)は回転体の体積を出す問題。ここでは円錐をいくつか組み合わせたり抜いたりして体積パズルをしなければならない上に計算が非常に面倒なので難易度は高くなっている。円錐の体積を出すときで割ることを忘れる子がいるので注意しよう。

対策

今年度も例年の傾向通り、よくある設定に一捻りを加えて難しそうに見せている出題が多かった。しかし臆せずひとつひとつ考えていけば典型的な解法で解けていくことがわかる。嵯峨野数学を攻略するうえで欠かせないのは標準的な問題に対する典型的な解法の習得である。まずは入試対策用の問題集や塾のテキストで標準的な問題を完璧に解けるように解法を定着させよう。今年度の難しい問題はとにかく計算が重かった。概要でも述べたが普段から計算練習を怠らないようにしよう。例えば大問1は簡単な計算問題であるが、36点満点なので意外と馬鹿に出来ない。このような問題をしっかり得点できるかが大切である

大問1(6)、大問3、4、5(3)と全体的に図形絡みの問題が多かった。図形は多くの中学生が苦手とする上に他の単元との複合問題として出てきやすいので、嵯峨野を受験する際は図形の問題はしっかり解けるようにしておこう。なぜ図形は多くの中学生が苦手とするのかは、多くの理由があるが一つには試行錯誤が必要だからである。証明問題や答えを求める過程を要求されるような問題は図形問題に多く、単純な道筋では解けず長い試行錯誤を必要とする。すぐに答えに飛びつくのではなく、ああでもないこうでもないと試行錯誤を繰り返すことで数学力は上がってくる。嵯峨野は「考えられる人」を求めているのかもしれない。

 

理科

総論

小問数は34問と例年並み。大問が4つで、物理・生物・化学・地学の4分野全てから出題がなされるというのも傾向通りである。専門学科の他の3校(特に堀川・桃山)は4分野のうち2分野のみから出題されるような時もあるので、毎年満遍なく全ての分野から問題が出るのは実は専門学科の中では珍しい。

嵯峨野高校京都こすもす科は問題ごとの難易度差が大きいので、まずは簡単な問題を着実に得点したいところ。一般的には知識問題が簡単で思考問題が難しいと言われがちだが、専門学科においては教科書内容の知識を問う問題であっても、出題の形式により解答が難しいものが存在する(本年度の嵯峨野大問3(1)(2)など)ので、問題の種類に囚われることなく、まずは全体に目を通すkとを意識したい。

大問別講評

大問1

エレベーターをテーマにした物理分野からの出題。昨年度は綱引きがテーマになっていた。図表・長めの文章・初見のテーマといかにも専門学科入試らしい出題になっていて、難易度はやや高め。力と運動の分野は専門学科入試で最も問われる分野と言って過言ではなく、本問もしっかりと対策を積んでいないと太刀打ちするのは厳しいだろう。特に(3)は難問で、合格者の中でも全問正解した人は多くないと考えられる。長い文章については、結果的に図を見ればわかる情報が多く、時間をかけて読む必要はないのだが、それを本番の環境で判断するためには素早く読む力をつける必要がある。これは他の科目にも共通することなので、全科目の勉強を行う中で意識してもらいたい。

大問2

植物の構造をテーマにした生物分野からの出題で難易度はやや高い。まず[A]のパートについて、植物の各分類とそれらの特徴は非常によく問われる内容だが、具体的な植物種と対応させなければならないことと、⚪︎種類の植物に共通する特徴を解答するという形式が、難易度を上昇させている。「専門学科入試では教科書外の知識は必要ないが、逆に教科書内の知識は完璧にしておく必要がある」と言われる所以である。(2)と図1をヒントにすると「アブラナが双子葉類である」「アブラナ以外にもう一つ双子葉類の植物がある」ということが分かる等、問題文中の手がかりを活用しながら解答したいところ。[B]「環状はく皮」という実験操作自体は目新しいが、実際の実験内容および問われている内容は標準的なので、全問正解を目指したい。

大問3

炭酸水素ナトリウムの熱分解をテーマにした化学分野からの出題。[A][B]ともに平易なので確実に得点を積み重ねたい。差がつきそうなのは(3)で質量保存の法則を用いた計算が必要。ここを苦手とする受験生は多く、よく出題される範囲でもあるので、図を書いて整理するなど自分なりの解き方を確立しておくべきである。

大問4

湿度と温度変化をテーマにした地学分野からの出題で、問題文が対話形式になっている。対話形式の文章は特に不必要な情報が多いので、素早く読むことを心がけたい。難易度は平均的だが、(3)(5)(6)の実験操作・結果に関わる問題は難しいが、問題中の実験と教科書や授業で学んだ知識とを結びつけるヒントは対話文の中に隠れているので、行き詰まった時でも冷静に本文に立ち返れるよう本番を想定した演習を積んでおくことを推奨する。

今年の一問

問題

大問2(3)一部抜粋・改変

16.8gの炭酸水素ナトリウムを十分に加熱すると、炭酸ナトリウムが10.6g残り、水と二酸化炭素が生成することがわかった。しかし、教科書とは異なり、試験管に残った固体は13.7gであった。今回の実験では、水と二酸化炭素が合わせて【①】gしか生成しておらず、加熱が不十分であり、一部の炭酸水素ナトリウムしか反応していなかったと考えられる。したがって、試験管の中に残った固体には、【②】gの炭酸水素ナトリウムが反応せずに含まれていると考えられる。

解答・解説

正解…①3.1 ②8.4

 

16.8gの炭酸水素ナトリウムを加熱すると13.7gの固体になったということなので、生成した水と二酸化炭素の量は16.8-13.7=3.1...①

十分に加熱すれば16.8gの炭酸水素ナトリウムからは6.2gの水と二酸化炭素が生成すること及び①を踏まえて考えると、試験管内の固体には3.1gの水と二酸化炭素を生成し得る量の炭酸水素ナトリウムが含まれているので、

16.8 : 6.2 = ② : 3.1 

② = 8.4f

ポイント

①は絶対に正解しなければならない問題である。質量保存則にまつわる最も基本的な問題と言っていいだろう。②は難問というわけではないのだが、誤って3.1g(これは試験管内に残った炭酸水素ナトリウムから生成する水と二酸化炭素の量)などと解答する受験生がいそうな問題であり、ここで差をつける側に回りたい。

 

まとめ

図表・文量が多いので素早く正確に情報を処理する力は必須である。過去問演習でその感覚を掴んでいってほしい。初見内容の理解を問われる問題においては、試験中に焦りを感じる場面は多々あると思うが、そんなときに頼りになるのは教科書知識の正確な理解だ。自分が確実に知っている内容の問題を解くことができれば、それだけで合格者平均点にかなり近づくことができる。難しい問題揃いだからこそ、その中に紛れている容易な問題は確実に得点できるよう、基礎を積み上げて欲しい。

社会

嵯峨野社会 例年の傾向

特徴① 各分野から満遍なく出題される

嵯峨野高校の社会では大問1が融合問題,大問2が歴史,大問3が地理,大問4が公民に関する問題となっています。各分野から満遍なく出題されるため,どの分野も疎かにできません。

特徴② 地理分野が難しい

嵯峨野高校の大問3は地理分野から出題されますが,他の大問と比べると難易度が高いです。統計問題,地図の読み取り問題が毎年必ず出題されますが,これらは特に難易度が高いです。ただ,問題の出題傾向は例年同様なので,対策が可能です。

特徴③ 記述問題が出題される

嵯峨野高校の社会では60字程度の記述問題が毎年3題程度出題されます。内容は教科書に載っている内容がそのまま問われることがほとんどなので,対策はしやすいです。

嵯峨野社会 2024年度入試分析

※難易度の説明

A:合格点を取るためには正解しなければならない問題

B:合格点を取るためには半分以上は正解しなければならに問題

C:解けなくても合否に影響しない(=解けなくても十分合格できる)問題

大問1

問題番号

分野

概要

難易度

地理

エジプトの地理に関する問題

A

歴史

縄文時代の食料事情に関する問題

A

歴史

江戸時代の特産品の産地に関する問題

C

a

地理

等高線の読み取り問題

A

b

地理

地形図の読み取り問題

A

歴史

環境問題に関連する出来事に関する問題

B

地理

木材供給量の統計の読み取り問題

B

公民

違法伐採木材の流通が公正な取引を害する理由を説明する問題

B

⑺は記述問題,それ以外は選択問題あるいは短答問題でした。

各分野から満遍なく出題されました。

大問2

問題番号

分野

概要

難易度

歴史

殷と秦の文化・政治に関する問題

A

歴史

縄文時代・弥生時代の歴史書と遺跡に関する問題

B

歴史

日本が隋に対して対等な立場を主張した理由に関する問題

B

歴史

平安時代の仏教に関する問題

A

歴史

フビライ・ハンが定めた王朝の国号を答える問題

A

歴史

日清戦争のきっかけとなった出来事と講和条約に関する問題

A

歴史

二十一か条の要求に関する問題

B

⑶は記述問題,それ以外は選択問題あるいは短答問題でした。

例年に比べて図表が多く出題されましたが,教科書に載っている内容を知っていれば解答できる問題がほとんどでした。

大問3

問題番号

分野

概要

難易度

地理

地形図の読み取り問題

A

地理

岡山県の気候に関する問題

A

地理

岡山県の災害に関する問題

C

地理

写真の地点を地形図中から選択する問題

B

地理

岡山県の統計に関する問題

C

地理

中国地方の時計に関する問題

B

⑷は記述問題,それ以外は選択問題あるいは短答問題でした。

地形図の読み取り問題,統計問題は例年通り難しい問題が多く出題されました。

大問4

問題番号

分野

概要

難易度

公民

グローバル化に関する問題

A

a

公民

兵器の使用について定めた条約に関する問題

C

b

公民

日本の安全保障に関する問題

B

公民

各国の政府開発援助費に関する問題

B

公民

国家の三要素に関する問題

B

すべて選択問題あるいは短答問題でした。

公民は国際社会に関する出題が目立ちました。中学3年生の最後に学習する分野であるため,教科書に載っている内容でも習熟度によって正答率が変わったと思われます。

嵯峨野社会 対策と勉強法

対策① 教科書の内容を確実に覚える

嵯峨野高校の社会の問題は,教科書に書かれている内容からしか出題されません。つまり,教科書の内容を確実に覚えることで,合格点を取ることができます。嵯峨野高校の記述問題は教科書に載っている内容がそのまま出題されることがほとんどです。

教科書の内容を確実なものにするためには,定期テストに向けて普段からしっかり勉強することが必要です。中学3年生になったら中2までの内容の復習を行いつつ,歴史・公民分野の先取りを行うことが重要です。

中学3年間の内容が1冊にまとまっている問題集を進めながら,教科書範囲の内容を確実な物にしましょう。

対策② 普段から資料集・地図帳を見る

西京高校の社会の問題は,図表に関する問題が多く出題されます。嵯峨野高校の社会の問題では資料集に載っているような図表や写真が多く出題されるため,図表を知っていることで得点を上げることができます。

図表に慣れておくためにも,普段の学習から図表を見る習慣をつけ,写真や統計,史料などの内容を把握しておくようにしましょう。

対策③ 過去問を解く

嵯峨野高校の社会の問題は過去問の傾向に沿って出題されます。入試当日に全く同じ問題が出題されることはほとんどないですが,出題傾向に慣れておくことで問題に対する対応力を高めることができます。

嵯峨野高校の社会の傾向をつかむためにも,過去問3年分は解いておきましょう。その際,正解した問題も間違えた問題も,どのように答えが導かれるか説明できるようになるまで復習をしておきましょう。